日本からロンドン不動産の購入を検討されている方、あるいはすでにロンドンに物件を所有されている方にとって、円とポンドの為替動向は無視できない要素のひとつです。
もちろん、為替だけを理由に購入を急いだり、反対に検討を止めたりする必要はありません。不動産は長期的な視点で考えるべき資産であり、為替はその判断材料の一部にすぎません。
一方で、現在の円安は、ロンドン不動産を円換算した際の購入コストや、ポンドで得られる賃貸収入の日本円での価値に、確実に影響を与えています。
「円安」とは何を意味するのでしょうか
円安とは、円の価値が他の通貨に対して下がり、同じ金額の外貨を購入するために、以前より多くの円が必要になる状態を指します。
ロンドン不動産は基本的にポンド建てで取引されます。そのため、日本円を原資として購入する場合、円安が進むほど、同じ価格の物件でも円換算での負担は大きくなります。
2026年5月時点では、1ポンドはおおよそ212円前後で推移しています。
過去10年で見ると、ポンドは円に対して大きく上昇しており、この変化は日本人購入者にとって決して小さなものではありません。
例えば、2016年に50万ポンドの物件を購入する場合、円換算ではおよそ6,750万円程度でした。これに対し、現在同じ50万ポンドの物件を購入するには、約1億600万円が必要になります。
物件そのもののポンド価格が変わっていなくても、為替の影響だけで円での購入負担は大きく変わります。
これが、円安がロンドン不動産購入に与える最も分かりやすい影響です。
なぜ円安が続いているのでしょうか
近年の円安の背景には、日本と英国を含む主要国との金利差があります。
日本銀行は長年にわたり低金利政策を維持してきました。一方で、英国をはじめとする多くの国では、インフレ抑制のために政策金利が大きく引き上げられました。
その結果、相対的に金利の高い通貨が選ばれやすくなり、円が売られやすい環境が続いてきました。
もちろん為替相場は金利だけで決まるものではありませんが、現在の円安を理解する上で、この金利差は大きな要因のひとつと言えます。
購入時には円換算コストが上がる
日本円をポンドに換えてロンドン不動産を購入する場合、円安は購入コストの上昇として表れます。
例えば、60万ポンドの物件を購入する場合を考えてみます。
1ポンド=212円であれば、円換算では約1億2,720万円です。
一方、1ポンド=170円であれば、同じ60万ポンドの物件でも約1億200万円となります。
その差は約2,520万円です。
これは物件価格の上昇ではなく、為替の違いによって生じる差です。したがって、日本円を原資とする購入者にとって、現在の為替水準は慎重に確認すべき重要な要素となります。
すでに保有している場合、円安がプラスに働く面もある
一方で、すでにロンドン不動産を所有し、賃貸収入をポンドで受け取っているオーナー様にとっては、円安が必ずしもマイナスとは限りません。
賃貸収入はポンドで発生するため、日本円に換算した際には、円安の方が受取額は大きくなります。
例えば、月額賃料が2,000ポンドの場合、1ポンド=212円であれば約42万4,000円です。
一方、1ポンド=170円であれば、同じ2,000ポンドでも約34万円となります。
ポンドでの賃料は同じでも、日本円で見た収入額は大きく変わります。
つまり、円安は新規購入時のハードルを高くする一方で、すでにポンド建ての賃貸収入を得ているオーナー様にとっては、その円換算価値を高める側面もあります。
この点は、円安に関する一般的な議論では見落とされやすい部分です。
重要なのは、為替だけで判断しないこと
為替は不動産投資において重要な要素ですが、それだけで判断するべきものではありません。
特にロンドン不動産の場合、物件の立地、賃貸需要、建物の管理状態、将来的な再販性、そして購入後の賃貸運用体制など、総合的に見るべきポイントが多くあります。
為替が有利な時期に購入しても、空室が長く続いたり、想定より低い賃料でしか貸せなかったりすれば、投資としての安定性は下がります。
反対に、為替面では必ずしも理想的なタイミングでなくても、需要の強いエリアで適切な物件を選び、安定した賃貸運用ができれば、長期的には堅実な資産形成につながる可能性があります。
2026年のロンドン賃貸市場
為替と同じくらい重要なのが、ロンドンの賃貸市場そのものの状況です。
英国国家統計局(ONS)によると、英国全体の民間賃貸住宅の平均賃料は、2026年3月までの1年間で3.4%上昇し、月額1,377ポンドとなっています。
ロンドンの平均賃料は約2,067ポンドと、英国の中でも依然として高い水準にあります。
また、賃貸物件の供給はパンデミック前と比べて少ない状態が続いており、入居需要を下支えしています。
もちろん、すべての物件が同じように貸せるわけではありません。エリア、駅からの距離、建物のグレード、間取り、家具の状態、管理体制によって賃貸需要は大きく変わります。
そのため、ロンドン不動産を検討する際には、単に「ロンドンだから安心」と考えるのではなく、どのエリアで、どのような入居者層を想定し、どの程度の賃料が現実的なのかを丁寧に確認することが大切です。
賃貸規制の変化にも注意が必要です
2026年5月には、英国の民間賃貸市場において大きな法改正となるRenters' Rights Actが導入されました。
これは30年以上ぶりとも言われる大規模な制度変更であり、貸主と借主の関係、契約更新、退去手続き、賃料改定など、賃貸実務に幅広い影響を与える可能性があります。
日本在住のオーナー様にとって、英国の法改正や現場での運用変更を常に把握することは簡単ではありません。
だからこそ、購入後の管理体制は非常に重要です。
特に海外在住のオーナー様の場合、物件を購入すること以上に、購入後にどのように貸し、どのように維持し、どのように法令に対応していくかが、長期的な成果を左右します。
ポンド建て資産を持つという考え方
日本人投資家の中には、ロンドン不動産を単なる賃貸収入目的の資産としてだけでなく、ポンド建て資産として考える方も少なくありません。
円だけで資産を保有するのではなく、異なる通貨で資産を持つことは、資産分散のひとつの考え方です。
ただし、これは将来の為替を予測するものではありません。ポンドが常に強いという保証もありませんし、為替は短期的に大きく変動することもあります。
大切なのは、為替の一時的な動きだけに振り回されるのではなく、ご自身の資産全体の中で、ロンドン不動産がどのような役割を持つのかを整理することです。
Benham and Reevesでは、ロンドン全域に展開する21支店と連携しながら、日本人オーナー様の賃貸運用をサポートしています。現地市場に根差した管理体制を通じて、物件の資産価値維持と安定した運用をお手伝いしています。
収益を考える際の二つの視点
ロンドン不動産の収益を考える際には、次の二つの視点を分けて考えると分かりやすくなります。
第一に、ポンド建てでの収益です。
これは、物件がどの程度の賃料で貸せるのか、空室期間をどれだけ抑えられるのか、管理費や修繕費を差し引いた後にどの程度の収益が残るのか、という点です。
この部分は、物件選びや賃貸管理の質によって大きく変わります。
第二に、円換算後の収益です。
これは、ポンドで得た収入を日本円に換算した時にいくらになるのか、という視点です。
こちらは為替相場の影響を受けるため、完全にコントロールすることはできません。
そのため、まずはポンド建てで安定した収益を得られる物件かどうかを見極めることが重要です。その上で、為替の影響を長期的な視点で捉えることが、海外不動産を考える際の現実的なアプローチと言えるでしょう。
税務についても早めの確認が必要です
英国不動産を所有する日本人投資家は、英国側の税務だけでなく、日本側での申告義務についても確認が必要です。
英国では、非居住者オーナー向けの税務制度、賃貸収入に対する課税、売却時のキャピタルゲイン税、購入時のStamp Dutyなど、状況に応じて考慮すべき点があります。
また、日本居住者の場合、海外不動産から得た収入や資産について、日本側での申告が必要になる場合もあります。
税務上の取り扱いは、居住地、所有名義、収入額、ローンの有無、保有目的などによって変わります。そのため、購入を検討する段階から、必要に応じて税務の専門家に確認しておくことをお勧めします。
まとめ
円安は、日本からロンドン不動産を購入する際の円換算コストを確実に押し上げています。
一方で、すでにロンドン不動産を所有し、ポンド建ての賃貸収入を得ているオーナー様にとっては、円安によって日本円で見た収入価値が高まる面もあります。
重要なのは、円安を単純に良い、悪いと判断するのではなく、ご自身の状況に照らして冷静に考えることです。
これから購入を検討される方は、為替水準だけでなく、物件価格、賃貸需要、購入諸費用、税務、管理体制を含めて総合的に判断する必要があります。
すでに所有されている方は、現在の賃料が市場水準に合っているか、空室リスクを抑えられているか、管理や法令対応が適切に行われているかを改めて確認する良い機会かもしれません。
Benham and Reeves Japan Deskでは、ロンドン不動産の購入から賃貸運用、管理、売却まで、日本人のお客様の状況に合わせて実務面からサポートしています。
為替や市場環境が変化する中で、ご自身の計画や保有物件について整理されたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。